岩尾龍太郎氏の訃報に接して

福岡時代にお世話になった先生の訃報に接した。
お世話になったといっても実際に先生の授業を受けたことはなかった。
先生とは音楽でのつながりだった。
といっても楽器を習っていたわけでもない。
先生は大学の教授で、趣味としてリコーダーを演奏されていて、同じ大学の先生とテレマン合奏団を結成し、僕もそれに参加させていただいていたことがあった。

かれこれ8〜9年前、まだアマチュアの頃のことである。

あれから音大へと進みプロとして活動するようになり、東京を拠点に活動しながらも、いつか福岡に戻ったらまた呼ばれて一緒に演奏することになるのではないか、と何となく思ったこともあったが、それは叶わぬこととなってしまった。

そういえば毎年福岡で開催されている古楽音楽祭にもテレマン合奏団として参加したし、その音楽祭のヴァイオリン講習会の受講を勧めてくださったのも先生だった。
古楽の世界が一気に身近になったのはまさに先生のお陰である。

もしまた一緒に演奏することがあったら「上手になったなー」なんて言ってもらえるだろうか?と考えたこともあったのだが…

僕はまだプロの演奏家として活動を始めてから日が浅い。演奏も至らないところが多々ある。日々是精進である。
それだけに、僕のアマチュア時代の演奏を知る地元の知人たちから「上手になった」と言ってもらえることは何よりの動力源である。

今はそのひとつを失くしてしまったような気分である。

でもだからといって楽器を精進することを止めるわけにはいかない。
明日は故人を偲んで久々にテレマンでも演奏しようか。